【リポート】5月17日(日)「博多人形白彫会 若手作家作品展」リポートVOL.4
はかた伝統工芸館で開催中の「博多人形白彫会 若手作家作品展」は
日替わりで作家さんが当番を務め、実演をしてくれています。
工房に行かなくてもこの期間は、作家さんの職人技が目の前で見れたり、
質問などもできますよ。
今日のリポートは、当番で黙々と作品作りに没頭している
臼杵康弘さんをご紹介します。
臼杵さんも人形師さんの共通点であるモノづくりが
小さい頃から好きだったそうです。
しかも、モノづくりといっても臼杵さんの最初のモノづくりは
なんと「料理」でした。
18歳で和食の料理人を目指し修行し、懐石料理を作っていたそうです。
しかし、モノづくりの魂がそこではないことに気づき、縁あって、
まったく畑違いの博多人形師 亀田均さんに22歳で弟子入りします。
亀田さんは故小島与一さんの最後の弟子として入門され、
現在は博多人形だけでなく博多祇園山笠の飾り山やかき山を製作され、
文化向上に多方面でも活躍されています。
その博多人形界の重鎮、亀田さんは弟子をとらないそうなので、
臼杵さんは1番弟子であり、最初で最後の弟子になるかもしれません。
何ともすごい縁ですね。
博多人形の世界に入って22年、亀田さんのDNAを受け継ぎ独立した今は、
試行錯誤の毎日だそうですが、今回は挑戦作も含め4作品を出展。
一つ目は「フクロウ」。
自身も大好きなふくろうであり、幸運を運ぶシンボルでもあります。
博多人形を多くの人に親しんでもらいたいという想いを込めて
作っているそうです。
挑戦作の「博多みれん」。
「美人ものはあまり作っていなくて。
でも幅広い作品を作る努力はしないといけないので、
最近は挑戦の意味で作っています。」
と、臼杵さん。博多券番をモデルにした美人ものです。
「フクロウ」と「博多みれん」の白さは、博多人形の伝統的な彩色の顔料
胡粉(ごふん)を使用しています。
(胡粉とは貝殻を砕いて粉末状にして作られる顔料)
作品によって顔料は使い分けますが、臼杵さんは白さを表現する際は
胡粉を使い、博多人形独特の白さを際立たせるそうです。
次に「恵比寿椀」と「大黒飯」です。
小ぶりのサイズですが、恵比寿さまが手に持つお箸から
椀の中の海鮮の具までしっかりと細かな仕事が施されています。
500円玉と比べてみました。
こんなに小さくても福福しい存在感は大きく、
恵比寿様は大漁を、大黒様は豊作を意味するとされ、
商売繁盛をイメージし表現しています。
【恵比寿碗】
【大黒飯】
大黒飯の型を持ってきてくれました。
こんなに小さくても、石膏型で顔の表情の細部に
いたるまで、作ることができます。
料理業界出身とあって、飲食店に飾れるようにと
博多人形を日常品として提案した作品です。
400年以上経った今でも伝統は受け継がれ、
現代の作家さんたちがこのように現代のライフスタイルに
受け入れてもらえるように奮闘しています。
博多人形をはじめ手作りの工芸品には、
ひとつひとつ作り手が想いを込めて作り、
すべて意味があるものです。
普段お店に並んでいるだけでは作り手の気持ちや
作品の意味が伝わらないこともあります。
当館では、そのすばらしさを伝える場所でもあります。
もっとみなさんに、身近に感じていただき、
日常的なものになってもらえればと思います。