2020.8.7 【リポート】「博多人形妖怪展」リポートVOL.1
「第六界博多人形妖怪展」リポートVOL.1
今年で6回目となる「博多人形妖怪展」は、
リアルなものから可愛らしい妖怪まで
個性豊かな作品が200点以上集結しています。
今日は、妖怪の中で人気の高い「鬼」を
表現した作品の一部をご紹介します。
【元興寺】 宮永誉 作
「元興寺」は、飛鳥時代、奈良にある元興寺という
古いお寺に現れたと言われる鬼の妖怪です。
ある時、寺の童子達が変死する事件が続き、
鬼に殺されたとの噂が立ちました。
そこで元興寺で怪力自慢の童子が
鬼退治をかって出て、鬼を退治しました。
しかしその正体は昔、元興寺に奉公していた
無精な下男が霊鬼となって現われていた妖怪だったのでした。
その姿は、僧の姿をした鬼だといわれ、
この作品は、その残忍な姿を表現しています。
【酔いどれ鍾馗】 梶原正二 作
「鍾馗」は中国に伝わる神で、
玄宗皇帝の夢の中に出てきて病を治したことから
厄除けの神として崇められていました。
その鍾馗が退治した鬼の上で胡座をかき、
厳めしい表情で”よろこびの酒”を飲んでいるかたわらで、
その酒から少しこぼれだした酒を、ちゃっかり
盗み飲んでいる鬼の幸せそうな表情が見どころです。
ちゃっかりこぼれた酒を盗み飲みしている鬼
鍾馗の衣の柄や装飾品の細かな細工
【茨木】 宮永誉 作
茨木童子(いばらきどうじ)とは、
現在の京都府丹後半島に位置する大江山(おおえやま)を住処にし、
平安時代の京都を荒らし回ったとされる「鬼」の一人です。
鬼の頭領である酒吞童子(しゅてんどうじ)の家来でもあり、
酒吞童子や仲間たちと一緒に、京都に住む貴族の子女を
誘拐するなど乱暴狼藉を働いていました。
そこで、源頼光の4人の武将たちが、
京都の羅生門へ鬼退治に行きます。
その武将の一人、渡辺綱(わたなべのつな)によって
片腕を切り落とされ、後日奪い返した鬼として語り継がれています。
この作品は、その片腕を表現しています。
腕のシワや浮き出した血管
腕の切り口までリアルに表現されています。
【招福鬼】 梶原正二 作
「鬼」は、恐ろしいもの、強いもの、悪ものなど
いろいろな伝説で言い伝えがありますが、
逆に鬼は悪霊を追い払い、人に幸福をもたらしてくれる
存在と考えている説もあります。
このように日本の鬼は、
「悪」「善」「神」とそれぞれの顔を持っています。
この作品は、「善」の鬼で、
嬉しそうに福を運んでいるようすを表現しています。
【「ぽっ」&「わぉ」】 宮永誉 作
「鬼の告白シーン」。
思わず、ほんわかする作品です。
ちょぴり頬を赤らめながら一輪のバラの花を持って、
意中の鬼に告白するようす
イケメンすぎる鬼・・・
告白を受けて「わぉ!どうしよう」っと、
思わず両手で口を押えて、はにかんでいる
可愛らしい鬼を表現しています。
【地獄の一服】 梶原正二 作
鬼が酒を飲みながら
煙管を吸って一服している様子。
よく見ると、
お酒は人間の血で・・・
煙管は人間の形をしていて、
人間の魂を吸い取っていたのです・・・
【鬼のなやみごと】 梶原正二 作
鬼は桃が怖い・・・
桃太郎と鬼の天敵関係は、奈良時代に作られた
「古事記」から来ているそうです。
神様であるイザナギが、
黄泉(死者の世界)から脱出する際に、
追いかけてきた「黄泉の国の軍勢」に向かって、
桃を三つ投げたところ、
軍勢は尻尾を巻いて逃げかえったと言われています。
その逸話から『桃は邪鬼を追い払う』とされ、
桃太郎の作られた室町時代にまで続いています。
これが桃太郎の名前の由来につながっているとされています。
鬼は桃(桃太郎)がとっても苦手。
その桃太郎が自分の頭の上に乗っかっているため、
頭をかかえて、困っているようすを表現。
ここで紹介しているのはほんの一部ですが、
作品にはストーリーがあり、
作家さんの想いが込められています。
機会があったら、
作家さんに聞いてみてはいかがでしょうか・・・