【お知らせ】News!「福岡と静岡の交流事業」について
福岡(博多)と静岡(駿府)交流事業でコラボ作品が誕生しました!
はかた伝統工芸館では、2011年の開館より、伝統産業の振興・発展と都市間での文化交流を目的とした国内交流事業として、熊本・ 大分・佐賀(有田)との交流事業を継続的に展開しています。その一環として2023年より静岡市(駿府)にある「駿府の工房 匠宿」との交流が始まりました。そして作家同士の交流から2024年11月、コラボ作品が誕生しました。
福岡市の伝統工芸は、古くは鎌倉時代に誕生した博多織をはじめ、江戸時代、福岡城築城の際に、全国から職人が集められ、そこから誕生した博多人形など長い歴史の中で様々な伝統工芸品が育まれてきました。
静岡市の伝統工芸も、江戸時代、久能山東照宮や静岡浅間神社の造営に際し、全国の秀でた職人たちを静岡に集めたことに始まるとされています。その伝統と技術は今なお受け継がれ静岡市の伝統工芸品として発展を続けています。
このように福岡と静岡は歴史や伝統文化が同じように発展しており、その伝統文化に大きく携わったとされる“聖一国師”とも繋がりが深い都市です。
聖一国師は博多の承天寺を開山し、うどんや饅頭などの製法や茶種を日本に持ち帰り伝え、博多織の歴史にも大きく繋がりがあり、博多祇園山笠の生みの親とされています。また静岡市葵区栃沢生まれで「静岡茶の祖」とされています。
今回のコラボ作品はその歴史にクローズアップし、福岡の伝統工芸「博多織」と静岡の伝統工芸「静岡お茶染め」で製作した作品となります。
この度、福岡(博多)と静岡(駿府)を繋げる「承天寺」を背景に「博多織お茶染め暖簾ー志ー」が完成し、「承天寺」に寄贈する運びとなりましたのでお知らせいたします。
<コラボ作品について>
福岡(博多)と静岡(駿府)を繋げる承天寺を背景に「博多織お茶染め暖簾」を製作。 博多織の手織り作家・荒木希代氏が生地を製作、静岡お茶染め作家・鷲巣恭一郎氏によってデザイン・染色が施されました。
◆博多織お茶染め暖簾「志」について◆
ー柄のモチーフは「洗濤庭」ー
聖一国師が命がけで渡った玄界灘を茶園俯瞰図で表現しています。
茶園俯瞰図とは、美しい茶園の畝の流れを上空から見下ろした風景を図案化したものです。こだわりは、畝以外の要素を入れないこと、機械が抜けるように行き止まりを作らないこと。
「承天寺 洗濤庭」
―お茶で染めた博多織暖簾「志」―
聖一国師が命がけで渡った玄界灘をモチーフとし、暖簾の下部にのみ柄を入れることで、先の見えない過酷な航海の様子を表現しています。
そのような状況下に於いて前に進み続けることができたのはその「志」ひとつ。
聖一国師が見据えていた世に想いを馳せて製作されました。
―聖一国師が持ち帰った博多織の技法を受け継ぐ「魂」を込めてー
聖一国師の「志」を胸に、博多織を受け継ぎ、未来に繋げるという想いを込めて製作されました。
<承天寺に奉納されるようす> 【ご協力】萬松山・承天寺
(写真左から)
博多織・荒木氏、お茶染め・前田氏、承天寺 神保至雲住職、お茶染め・鷲巣氏
<作家の紹介>
【博多織】荒木希代
2008年博多織デベロップメントカレッジ入学、2010年同校卒業後、着物制作開始。
2011年同校同期生の大内田明子さんと養蚕から博多織までの一貫生産を目的とした活動”まゆ姫の夢”プロジェクト開始。
全国伝統的工芸品公募展「内閣総理大臣賞」をはじめ数々の賞を受賞。
着物や帯を制作した後に残る糸やその糸で織った生地を使ったアクセサリーや服飾のブランド「CO.COON」設立。
<荒木氏コメント>
「博多織と縁の深い承天寺を開山された聖一国師が、静岡茶の始祖として静岡では知られており、
福岡の博多織と静岡のお茶染めで承天寺様への暖簾を作るという、とても縁深い作品ができたことを嬉しく思います。
春に静岡へ行き、始まったコラボ製作が秋には形になり、このスピード感がなければできなかったように思います。
この作品だけで終わることなく、また次のコラボ製作につながればと思います」
【お茶染めWashizu.代表】鷲巣恭一郎
鷲巣染物店5代目。静岡市染色組合「駿河和染」理事
静岡デザイン専門学校非常勤講師。静岡県工芸家協会会員
駿府の工房 匠宿 染工房工房長
2001 鷲巣染物店にて修行
2006 お茶染めの研究開始
2021 世界緑茶協会O-CHAパイオニア賞CHAllenge賞受賞
2022 第48回静岡県工芸美術展 県知事賞受賞
2023 第97回 国展入選。第49回静岡県工芸美術展 奨励賞受賞。
2024 第98回 国展入選
<鷲巣氏コメント>
「この度は「はかた伝統工芸館」と「駿府の工房 匠宿」の交流事業より、博多織の荒木希代さんとご縁をいただき、
聖一国師が開山された承天寺様に「博多織お茶染め暖簾―志―」を奉納させていただく運びとなりました。
お茶染め文化創出のために活動を始めてから今日まで、多くの縁をいただきながら歩んで参りましたが、
今回ほど自身の活動が結実したものはありません。
本事業をきっかけに博多と駿府の職人の交流が盛んになり、新たな文化創出の足掛かりになることを願っております。
この度は誠にありがとうございました。」
【お茶染めWashizu.製造部】前田結嬉
2001年 12月 29日生
専門学校でデザインを学び、ものづくりの楽しさを実感した。
自身の成人式で着用した振袖をきっかけに、染物の世界に入ることを決意。
一人一人の気持ちと向き合ったものづくりができる職人を目指し、お茶染めWashizu.で修行中。
2023 静岡デザイン専門学校 プロダクトデザイン科 卒業
2023 お茶染めWashizu.に弟子入り