【リポート】「2016博多織伝統工芸士作品展」リポートVOL.02!
「2016博多織伝統工芸士作品展」リポートVOL.02!
博多織の伝統工芸士は染色・意匠・製織の部門に分かれ、
それぞれの分野の匠の技術がひとつになって博多織が生まれます。
博多織伝統工芸士会・豊原会長が、
「伝統工芸士が持つ技術の高さと手作りの良さを見て欲しい」というように、
今年の作品は、新たな試みや技法に特徴がある作品が多く紹介されています。
その中でひときわ才を発揮している染色部門の作品に
クローズアップしたいと思います。
この作品は、博多織で初の試みとなる「酵素精錬」された絹糸を使用して
織った「博多織の帯」です。
酵素精錬された糸
博多織は、絹糸で織られていますが、
この絹糸は匠の技が光っています。
「酵素精錬」は、生糸の精錬法として昔からある技法ですが、
博多織ではコスト面などからその技法で精錬された糸は作っておらず、
使用はしていなかったそうです。
このたび、博多織伝統工芸士である染色の匠・木下庄蔵さんの
1年におよぶ努力が実り、「酵素精錬」された絹糸が誕生しました!
そして、その絹糸を使って、平地八寸なごや帯「五献上」が織られ
今回お披露目となりました。
西日本新聞の取材を受ける木下庄蔵さん
なぜ「酵素精錬」された絹糸を作ったのか、というと。
現在、博多織に使用される生糸は、国産のものが少なくなり、
ブラジルや中国などの海外の生糸を使用しているものが多く、
品質にばらつきがあるため精錬がうまく行かない場合があるそうです。
「酵素精錬」にすることで、品質の向上に繋がりより国産に近い絹糸に
仕上げることが出来るということなのです。
特徴としては「光沢が増す」「彩色が鮮やか」
「織上りが鮮明」というメリットが生まれます。
特に着尺にもってこいということです。
専門的すぎて難しいのですが、精錬した絹糸をつくるには、
下記の断面写真のように、フィブロインという生糸の芯の周りを保護する
セリシンというタンパク質を取りのぞき、
フィブロインを傷めずに精錬しなければなりません。
そこで今回の酵素精錬ならば、フィブロインを傷めず
より精度の高い絹糸に仕上げることができるのです。
このように、匠の“探求心“と“妥協しないこだわり“が生んだ
新たな試みはこれからまだまだ続きますが、
「染色」「意匠」「製織」とそれぞれの分野で伝統工芸士のみなさんが日々努力し、
伝統工芸品が生まれています。